マインドマップはトニー・ブザンが1970年代に発表した方法で新版ザ・マインドマップによると、「思考全般に使えるツールで、考えていることを視覚化して図で表す。」ということです。つまり図考の方法の一つだと思います。
私はマインドマップを利用した経験がほとんどないので、マインドマップの詳細を紹介できませんが、概要というレベルで、札寄せ法との違いを紹介します。マインドマップと札寄せ法は、使用目的が同じです。
トニー・ブザンは著書で、『「頭を働かせたい」と思うときにはいつでも、マインドマップをつかってみよう。思考力と記憶力が高まるはずだ。』と書いています。
これは札寄せ法でも言えることです。
そして、図を描く過程で気付きを得たり、納得したりすることが多く、描きあがった図には必ずしも答えが現れているとはかぎらない、と言うことも共通していると思います。
しかし出来上がる図は、作り方も見た目も全然違います。
なお、マインドマップについての知識はトニー・ブザンによる下記の著作から読み取ったものです。
・ザ・マインドマップ
・仕事に役立つマインドマップ
・ザ・マインドマップ[ビジネス編]
・マインドマップ超入門
・新版ザ・マインドマップ
・マインドマップ 最強の教科書
1.「マインドマップ」を概観する2.マインドマップと札寄せ法の対比マインドマップでは課題を表すために、中心に3色以上使ったカラフルなセントラル・イメージを必ず描きます。
そして幾つかのメインブランチをセントラル・イメージから放射状に描き、メインブランチに沿うように基本アイデア(キーワードまたはキーイメージ)を書きます。
先ず基本アイデアを決めてから、連想を始めるのです。
メインブランチから曲線でブランチを伸ばし、次々に連想して思いついた内容をそのブランチに沿わせて単語で書きます。
マインドマップには札のようなものは無く、木の枝のようにブランチが広がっている図になります。
ブザンは著書で『この図が論理的な左脳と創造的な右脳の両方を使うように仕向け、「全脳」思考を活性化するのだ。』と書いています。
なお通常のマインドマップとは別に、ミニマインドマップと呼ぶものがあります。
基本アイデアを決めずメインブランチを描かずに、発散思考で思いついた事をセントラル・イメージから放射状の枝のように伸ばす方法を、ミニマインドマップと呼んでいます。
下は私がマインドマップについて、基本アイデアを3つ決めて、思いつくままに描いたマインドマップです。
私の解釈ではマインドマップを使って考える効果は、次のようなことだと思います。
・課題についてセントラル・イメージと基本アイデアを絞り出したり、ブランチに沿って書く内容を単語または絵に絞り込んだり、それぞれのブランチの色を決めたりするために、しっかりと考える。
・連想が放射状に広がる様子を図に描くこと、その図が言葉だけでなく色や曲線、そして絵も重要な要素になっていることによって、左脳も右脳も使った全脳思考を活性化する。
・その結果として、何かについて気付いたり、理解、決断、発想を得たり、長期記憶が促進される。
なお、ブザンは著書の中で、他人が描いたマインドマップを素晴らしいとか綺麗だなどと評価した記述もしていますが、それは二次的なことであり、描いた人の頭に浮かんだことが本質的な成果であろうと個人的には思います。
描いた本人が何度も見返すことによって、新たな発想を得ることもあるので、キレイな図を描いて取っておくのは良いと思います。
3.マインドマップと札寄せ法の使い分けここまでにマインドマップを概観しました。
ここではマインドマップと札寄せ法の共通点と相違点について検討します。
項目 マインドマップ 札寄せ法 手順の直接の目的 文字だけでなく色・絵なども重視して全脳思考を活性化する 札同士の関連性に注目して、札の配置を変えてみることで思考を活性化する 技法を使う目的 何かについて気付いたり、理解、決断、発想を得たり、長期記憶を促進する 課題の予備知識がないとき 事前に下準備として概要を掴んでから、基本アイデアを決める 下準備はせず、先入観がない状態で気になることを、札に書き留める やっても結果を得られないとき ・ミニマインドマップを作って基本アイデアを探す
・課題を分解したり、大きな観点の課題にして別のマインドマップを描く
等々・札寄せで注目する札同士の関連性を変えて再度行う
・課題を分解したり、大きな観点の課題にして別の札寄せを行う図の扱い 主に個人的な図。
他人が見たときに必ずしも理解できる図ではないが、芸術的な作品にもなることがある個人的な図。
図はヒントを得るために実験をした残骸であり、他人が見たときに必ずしも理解できる図ではない推奨ソフトウェア ・iMindMap ・ふだメモ
・札寄せ用具(1) 手順の直接の目的
マインドマップは描くことによって、文字だけでなく色・絵なども重視して全脳思考を活性化することが、手順の直接の目的です。
これを実現するためには法則に従って描く必要があると「マインドマップ 最強の教科書」に書かれています。
10項目ある法則を私なりに要約すると以下のようになります。
・大きめの白い無地の紙を横長に使い、その真ん中に、テーマを表したものとしてセントラル・イメージを、3色以上使った絵で描く
・セントラル・イメージから、複数のブランチを色分けして放射状に流れるように、根元が太く、だんだん細くなるように描く
・連想で得た内容を単語またはイメージ、シンボルで、一つずつブランチに沿って書きこむ
・見やすさを意識する
スペース配分を考えてブランチを配置する
文字は読みやすい字で書き、立体的表現も使う
・関連する項目が離れているときは、マーカーなどで強調したり、矢印や接続線で結びつける
法則に従った中で独自のスタイルを築くべきであり、何枚も書くうちにそれが可能になる。
100枚くらい描けば相当な腕前になっているはずだと書かれています。一方、札寄せ法は、集めたデータを見て自分が思いつくことを色々な札の配置で表現してみて何らかの気づきを得ることが、技法の直接的な目的です。
すなわち様々な観点で並べ替えてみたり、関連する札同士を線や矢線で結んだり、グループ化して線で囲んでみることによって脳を刺激するのであって、色や絵による効果は副次的なものととらえています。(2) 技法を使う目的
マインドマップと札寄せ法は、それを使って何を得たいのかという目的が、ほぼ同じだと思います。
その目的は、「何かについて気付いたり、理解、決断、発想を得たり、長期記憶を促進する」などです。(3) 課題の予備知識がないとき
マインドマップは課題に関して基本アイデアを決める必要があります。
このため、予備知識がない課題を扱うときには、下準備として概要を掴む必要があります。
例えば未知の分野の本を理解するためであれば、まず斜め読みをするなどがこれに当たります。
そしてキーとなりそうな単語でミニマインドマップを描き、そこから基本アイデアを決めるという方法もあります。
一方、札寄せ法は統一性のないバラバラな事柄を徐々にまとめ上げて、理解や発想を得る方法なので、課題について気になる事柄を札に書くことから始めます。
未知の分野の本を理解するための場合でも、初めて読んでいるときに気になることがあれば、どんどん札にしていくのです。
もちろん、何回も読むことは本の理解を深めることになるので、それに越したことはありません。(4) やっても結果を得られないとき
札寄せ法は、やってみてうまくいかなくても、何回かやるといい結果を得られることがあります。
また休憩を挟んだり、別の日に再開するなどでも良い結果を得られることがあります。これはマインドマップでも同じだと思います。
マインドマップの場合は、以下のような対処も有効なようです。
・一度描き上げたマインドマップを見直して、不要なブランチをなくしたり、余分な情報や重複する情報を整理したり、ブランチの伸ばし方を変えて、もう一度最初から描く
・一つのブランチから枝分かれするブランチの数が多くて雑然とする場合は、その部分をミニマインドマップで別に描いて、元のマインドマップをすっきりしたものに描きなおす
・セントラル・イメージから直接連想することをミニマインドマップに描いて、基本アイデアを見直してから、再度マインドマップを描く
・課題を分解したり、大きな観点の課題にして別のマインドマップを描く
札寄せ法の場合では、
同じ課題に対して、札寄せで注目する札同士の関連性を変えて再度行うことや、
課題を分解したり、大きな観点の課題にして別の札寄せを行うもよい結果を得ることがあります。(5) 図の扱い
マインドマップは、色や形にこだわり、絵も描くことがあるので、絵画のような芸術的な作品にもなることがあります。
芸術作品として他人に感動を与えることもあるかもしれません。
しかし他人が見たときに必ずしも描かれている内容を理解できる図になっているとはかぎらないと思います。
札寄せ法の場合は、図はヒントを得るために実験をした残骸であり、他人が見たときに必ずしも理解できる図ではありません。(6) 推奨ソフトウェア
ブザンがマインドマップ用のソフトウェアとして紹介しているのは、「iMindMap」です。
『マインドマップの法則に従っているため、本物のマインドマップが作成できる。』と「マインドマップ 最強の教科書」に書かれています。
しかし、私はマインドマップは自分の手で描くことが、一番効果を発揮するはずだと思います。
白い紙に描きこむこと自体が、大きな刺激になっていると考えるからです。
一方、札寄せ法用のソフトウェアには「ふだメモ」と「札寄せ用具」があります。
これらのソフトウェアは、札寄せ法を手軽に行えるように作られています。
札寄せ法では複数の「札」を頻繁に動かして配置を検討するため、手軽に札を動かせる必要があるのです。
付箋紙を「札」として使って文を書き込んで模造紙に貼り付ける方法もありますが、線で札同士を結んだり、グループとして線で囲んだりすることの修正の容易さを考えると、ソフトウェアが便利です。以上みてきたように、マインドマップと札寄せ法は使用目的は同じでありながら、その主要機能である脳への刺激の方法が全く違います。
どちらの方法が優れているとも言えないと思います。
どちらかの方法でやってみて、どうしても良い結果を得られなければ、もう一方の方法でもやってみれば、 良い結果を得られるかもしれないと思います。